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ゲームの優れたオープニング10選 - IGN JAPAN

いいゲームでも、序盤から引き込まれないとその面白さに気が付く前にプレイヤーはやめてしまうのかもしれない。小説の最初の一文、映画の最初のシーン、漫画の最初のコマ、どんなエンターテイメントでも出だしは命だ。もちろん、出だしの悪い作品にも傑作がないわけではないが、その魅力に気づく人間が減ってしまうのは紛れもない事実だろう。


では、ゲームの優れたオープニングとはどういうものなのだろうか。ゲームにアクション性を求める人が多いからか、序盤のペース配分がゆっくりすぎるゲームに対する不満の意見をよく耳にするが、筆者はむしろスロースターターが好みだ。しかし、カットシーンが長く、操作できるまでの時間が長い場合は確かにイライラする。そのカットシーンはストーリーにおいて必要なのかもしれないが、映画や小説と違って、ゲームを遊ぶ我々は「動かしたい」という前提でゲームを起動しており、一方的な聞き手になるつもりはそもそもない。インタラクションのないストーリー描写に対する忍耐力は、他のエンターテイメントを嗜むときより明らかに弱くなっている。

本稿では――私の独断で――ゲームの優れたオープニングを紹介するわけだが、カットシーンがよく出来ているだけのものは除外することにした。序盤でプレイヤーにどういうタスクを与え、それをどのようにストーリーと絡めるのかが、ゲームならではのストーリーテリングと考えているからだ。それでは、見ていこう。

スーパーマリオブラザーズ

『スーパーマリオブラザーズ』の最初のステージの巧みなところは、ゲームのルールをプレイヤーに伝えているところにある。マリオはもちろん、ゲームの当たり前の知識も現代のように普及していなかっ85年当時。眉間にシワを寄せたクリボーは、なんとなく「触れちゃいけないやつ」だとわかり、ステージ始めにあるハテナブロックは「触るといいことあるかな?」とプレイヤーに思わせる。ハテナブロックから出てくるキノコは、プレイヤーが何もしなくてもマリオにぶつかるように動き、それでプレイヤーはキノコがパワーアップなのだと学び取る。そこから緑色の土管があり、いかにも中に入れそうだ。なのに、中に入れない! しかし、土管は何個もある。これは繰り返し試すように促しており、成功すると土管でワープができるとわかる。このように、『スーパーマリオブラザーズ』の最初のステージはシームレスなチュートリアルのお見本であり、字も読めない5歳児だった僕にゲームの基本を教えてくれた。マリオが世界的な社会現象になったのは、この普遍的な序盤のステージデザインが大きく貢献しているはずだ。

スーパーメトロイド

『スーパーメトロイド』のオープニングは、静と動のリズムによるテンションの作り方が秀逸だ。主人公・サムスが惑星SR-388からベビーメトロイドを持ち帰り、銀河連邦の宇宙科学アカデミーでその生物構造を研究させるために預ける。このバックストーリーは、サムスが振り返るような形式で語られていくが、そこで急にヒロイックな音楽が止まり「非常事態だ」という文字が出る。ゲームプレイはここから始まり、サムスは何者かによって襲われた、不気味なほどに静かな研究施設の奥へと進む。ベビーメトロイドのある部屋にたどり着き、触れようとすると、サムスの宿敵であるドラゴンのようなエイリアンのリドリーが姿を見せる。ボス戦だ! プレイヤーは必死にリドリーを撃とうとするが、あまりにも強すぎる。リドリーがベビーメトロイドを奪ってその場を去ると「自爆装置が、発動しました。ただちに脱出してください」という文字が表示され、1分のタイマーがセットされる。アラームの音に焦りながら来た道を戻ると、青だった研究施設の背景色が赤に変わり、画面が途中で揺れたり傾いたりし、絶体絶命の状況を伝える演出も巧みだ。サムスが脱出した直後に惑星ごと爆発すると、サムスは惑星ゼーベスへ向かう。本編はここから始まるが、雨の中サムスの宇宙船であるスターシップから降りると、プレイヤーはすでに1つの物語を乗り越えたような気持ちにさせられている。

クロノ・トリガー

昔のJRPGはどれも主人公が母親に起こされるところから始まるようなイメージがあり、基本的にあまり褒められたものではない。しかし、『クロノ・トリガー』は特別だ。なぜなら、起床後はいきなり「世界を救いたまえ」と言われるわけでもなく、村が誰かに襲われるわけでもないからだ。建国千年の記念日であるこの日は、お祭りが開催されているリーネ広場に向かうところから始まる。

リーネ広場を歩き回っていると反対側からやってきた少女マールとぶつかり、彼女が落としたペンダントを拾ってあげると一緒にお祭りを見て回ることになる。これはすべてリアルタイムで描かれ、デート気分でお祭りのミニゲームを楽しんでいるとあっという間に恋心が湧いてしまうだろう。しかし、それもつかの間。クロノの幼馴染であるルッカは転送マシンを展示しており、マールが「面白そう」と言って試したいそうだ。しかし、すぐ横にある装置に転送されるはずが、マールはどこかへ消えてしまう! クロノは自分も転送マシンに乗って、マールの後を追うことを決意する。

当時のゲームでは当たり前だった、世界を救うことや知らないお姫様を救出すると言った目的よりも、自分で出会った少女の後を追う方がずっとパーソナルだった。カットシーンではなく、ゲームプレイで展開するお祭りのデートは、インタラクションを通してプレイヤーに冒険する動機を与えているのだ。

ファイナルファンタジーVII


『ファイナルファンタジーVII』ほどアイコニックなオープニングのゲームはないと思う。美少女エアリスが街を歩くカットシーンからどんどんズームアウトし、やがて巨大都市ミッドガルの全体が見える。そこで列車がミッドガルのどこかの駅に到着し、音楽は急にワイルドな曲に変わる。列車から降りるキャラクターたちは待機していた駅員を倒し、最後に主人公クラウドも列車から飛び降りる。そこで大きな黒人がクラウドを「新入り」と呼び、「オレに続け」と命令する。なるほど、この人がリーダーで、どうやらここでテロじみたことをやろうとしているわけか。ゲームを起動してから2分程度でプレイヤーはゲームを操作でき、それも当時のRPGのように寝ていたところを起こされるといった典型的なものではなく、刺激的なアクションシーンの真っ只中だ。方向キーを前へ傾けるとすぐに兵士らしい存在と遭遇し、戦闘になる。プレイヤーはまだ状況をうまく理解できないながらクラウドの長いバスターソードを振り回し、黒人の後についていく。『ファイナルファンタジーVII』は序盤のカットシーンで魔晄炉を爆破するミッションの概要を説明する代わりに、プレイヤーをいきなり緊迫した状況に置き、そのミッションに挑みながら事情が徐々に見えてくる方式を採用している。それがミッションの目的に興味がなく、「仕事」と割り切っているクラウドの設定とうまく絡み合っている。結果、アクション映画を見守るのとはまったく違い、プレイヤーはまるで自分自身がアクション映画の主人公になったような気分を味わえた。

メタルギアソリッド

昨今、小島秀夫のゲームは長いカットシーンで知られているし、『DEATH STRANDING』の序盤も「早く遊ばせてくれ!」と思いながらプレイしていたのが記憶に新しい。初代PlayStation向けに発売された『メタルギアソリッド』も、小島の代名詞と言えるシネマティックなタッチは健在だ。「A Hideo Kojima Game」という文字から始まる本作は、クリエイターの作家性を前面に出したゲームの初期例とも言える。

しかし、映画的演出から明白に影響を受けつつも、ゲームへの落とし込み方が巧妙である。オープニングムービーは一見すればまるで映画のワンシーンのようだが、実はミッションのブリーフィングという形式でゲームの目的、ボスキャラクター、そしてジャンルがステルスであることまで説明している。そこから「ニューゲーム」を選択すると、まだスタッフの名前が流れている状況でゲームがさっそく始まる。ハードボイルドな主人公・スネークが壁に張り付いてカバーするとカメラがクローズアップし、彼の吐く白い息が凄まじいリアリティを作り出す。スタッフの名前を流しながらステルスするこのパートで、プレイヤーは――『FFVII』と同様に――アクション映画の主人公になった気分が味わえたのだ。

ファミコン文庫 はじまりの森

古き良き昭和の時代に、「ぼく」が夏休みに祖父の田舎「くずの木村」を訪れる『ファミコン文庫 はじまりの森』は、列車で駅に到着するところから始まる。なるほど、『ぼくのなつやすみ』のように昭和のスローライフが楽しめるゲームか、と思うのかもしれない。しかし、駅まで迎えに来てくれるはずの祖父はまだ着いておらず、ぼくは待ちきれず線路を超えて冒険に出る。崖に落ちると、その先は森になっていた。遠くから聞こえる歌声を辿ると、川辺に紫の浴衣を着た不思議な少女と出会う。古いアドベンチャーゲームによくあるようなコマンド選択が、いきなりプレイヤーを少女との運命的な邂逅に導くわけだ。

その後はしばらく、祖父の元で暮らすほのぼのとした夏休みが続き、プレイヤーは昭和の現実に引き戻される。しかし、序盤で一瞬だけ「ぼく」を不思議な世界に連れ込むことで、プレイヤーは常に少女のことが頭にあり、それがアドベンチャーゲームの主軸となる。

物語のクライマックスに当たる部分を最初にちチラ見させる手法はゲームに限らずよく見かけるが、『はじまりの森』ではそれがゲームの目的をプレイヤーに提示するという役割を担っており、単なるスローライフを超えた不思議な体験を匂わせている。

シェンムーII

『シェンムーII』は、主人公・芭月涼の乗っている船が香港に入港するというシンプルなカットシーンから始まる。船を降りる場面から描くことで、香港が涼にとって外国であるという情報は前作を知らない人にも伝わるだろう。しつこく声をかけてくる客引きや、頼んでもいないのに涼の写真を撮るおじさん。周囲の人々の態度から、涼が異邦人であり、気をつけなければ足元を見られてしまうこともわかる。涼は右も左もわからない異国で、1つの紹介状にある住所だけを頼りに人探しをしなければならない。いきなり見知らぬ大都会に放り出されるこのオープニングは壮大な冒険を予期させる。そこからバッグを盗まれ、途方に暮れた気持ちで夜の香港を放浪する涼。凄まじいカルチャーショックと直面し、不安が募る本作の序盤は、これが「旅」のゲームであるというメッセージをプレイヤーにいち早く届けることに成功している。

The Last of Us

寄生菌のパンデミックにより人類が危機に晒され、その過酷な現実を生き残ろうとするジョエルとエリーのドラマを描いた『The Last of Us』。そんな本作のオープニングの巧みなところは、ゲーム本編の20年前を描いているところにある。ジョエルの娘であるサラを操作して、パンデミックが起こった夜を体験することになる。前知識のないプレイヤーは、ジョエルとサラが共に生き残る物語になると思っているはずだが、そこでサラがあっさりと軍に殺されてしまう。本編とは異なる時代や、メインストーリーに実は登場しないキャラクターを描くことで、その20年後のホラーのような日常に現実味がもたらされ、プレイヤーはジョエルの気難しい性格により感情移入できる。本作の最大の魅力はひねくれたジョエルと若くて好奇心旺盛なエリーの対比だろう。しかし、ジョエルの過去を描く序盤がなければ、エリーとの2人旅のロールプレイ体験は同じように成立しなかったはずだ。

ペルソナ5

『ペルソナ5』は、物語のターニングポイントと言える途中の場面からいきなりゲームを始める形式を採用している。プレイヤーはまだ何が起きているのかよくわからないが、どうやらカジノに忍び込んだ怪盗団のリーダーは警察に追いかけられているようだ。すぐに戦闘に巻き込まれるし、その後はステルスアクションに移る。ずいぶんと緊迫した状態だが、リーダーがあくまで余裕を醸し出しているのがなんともカッコいい。このように、プレイヤーはすぐにゲームプレイが楽しめるし、主人公のカッコよさにも浸かれる。ところが、そこで彼は意外にもすぐに捕まってしまい、次の場面では警察に監禁されており、新島という女性の警官に尋問される。プレイヤーの名前を答えなければならないあたりは、尋問という設定とRPGの古典的な文法がうまくブレンドしている。

強烈なオープニングであると同時に、ここから回想し、ときどき戻る物語の構造も秀逸だ。

還願 DEVOTION

目の前には古いブラウン管テレビがあり、下を眺めると新聞紙の上に置かれた煮魚と鍋に入ったスープがある。部屋を眺め回すと、数十年前を思わせる壁紙、カレンダー、本などがあり、仏壇やお札からすれば間違いなくアジアだ。壁に溜まった埃やカビの描写もすごいし、間違いなく超一流の環境デザインだ。しかし、実際に動くテレビの画面や台所から聞こえてくる主人公の妻の声があることによって、それは間違いなく「生きた」環境になり、プレイヤーは確実に80年代の台湾へとタイムスリップする。

『還願 DEVOTION』というゲームは強烈なホラー体験だが、この序盤の日常にここまでのリアリティがあればこそ、ホラーも生きる。筆者は台湾に住んだことがあるのでさらに感慨深いが、たとえ台湾について何も知らなかったとしても、プレイしたすべての人が本作の世界観に没入できるのもまた、この序盤の描写による貢献が大きいはずだ。


いかがだっただろうか? 読者のお気に入りのゲームのオープニングもぜひ知りたい。

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