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香港・九龍城砦を舞台にしたホラー死にゲー『港詭實録 ParanormalHK』【中華ゲーム見聞録】 - Game*Spark

!注意!本記事にはゲームのネタバレ表現が含まれています。また、ホラー表現が苦手な方も閲覧にご注意ください。


中華ゲーム見聞録」第66回目は、今は無き香港・九龍城砦を舞台にした3D探索&鬼ごっこホラーゲーム『港詭實録 ParanormalHK』をお届けします。

本作は香港のインディーデベロッパーGhostpie Studioが開発し、同社とGamera Gameによって1月6日にSteamで配信されました。PS4での配信も予定されているとのことです。本作はもともと『牛一』という題名でした。焼き肉屋ではなく、香港や広東省でのスラングで「誕生日」を意味します。「牛」の下に「一」で「生」になるからです。「今日は僕の牛一だ」というような使い方をしますね。ただ他の地方では使われない言葉なので、現在の題名の方が分かりやすいかと思います。

『港詭實録 ParanormalHK』のトレイラー

本作は、人気フリーホラーゲーム『青鬼』のような追いかけっこ要素を体験できるホラーゲームです。主人公のアーロクは、香港の心霊スポット番組のカメラマン。盂蘭節の夜に、美人キャスターのキャシーとともに九龍城砦の撮影へと向かいました。物語はここから始まります。

盂蘭節というのは香港の伝統行事で、日本で言うところのお盆に当たります。「盂蘭勝会」「鬼節」(「鬼」は中国語で「幽霊」の意味)とも呼ばれ、毎年の旧暦7月15日に香港で行われています。この時期になると香港の公園では派手な飾りの棚や櫓が立てられ、幽霊に施す衣服や食べ物が地面に並べられたり、紙銭が焼かれたりしています。台湾では「中元節」に当たり、似たような行事があります。

旧暦7月自体は台湾や香港では「鬼月」とも呼ばれ、幽霊がこの世にやってくる月となっています(7月が終わるとあの世に帰っていきます)。その霊たちが悪さをしないよう、なだめるためにも盂蘭節や中元節の行事が必要なのです。筆者が子供の頃は、この時期になるとテレビでは心霊レポート番組が多かった記憶がありますが、近年は流行らなくなったのか、ほとんど放映されなくなりましたね。

九龍城砦が取り壊されたのは1990年中頃ごろなので、それより以前は心霊番組も絶好調の時期だったと言えるでしょう。果たしてどんな幽霊が待ち受けているのか、さっそくプレイしていきましょう。

九龍城砦内をレポート



本作は日本語をサポートしています。ゲームを起動させた後、タイトルで「オプション」を選び、「システム」から言語選択で日本語を選んでください。これで表示が日本語に変わります。

画面が暗いゲームなので、見えづらいと感じたら、「オプション」の「グラフィック」でガンマの値を最大にするといいでしょう。ゲーム中は暗い中をライトを使って進むので、あえて暗めに設定しているものと思われます。

また「オプション」の「音声」では、ボイスを中国語と広東語から選ぶことができます。筆者は、広東語は簡単な挨拶と「ポリスストーリー」「プロジェクトA」のテーマソングぐらいしか分からないので、中国語にしました。


ゲーム開始。プレイヤーはカメラマンのアーロクで、目の前にいるのが美人キャスターのキャシーです。ピントが合っていないので、ぼやけていますね。後ろに下がるよう指示されます。本作はパッドでプレイできるので、筆者はXboxパッドを使っています。


ピントが合いました。仕切り直して、キャシーが番組の概要を説明してくれます。これから3つのグループに分かれて、この場所からどれだけ速く抜け出せるか競うという番組のようです。途中で超常現象に遭遇するかもしれないとのこと。


急にカメラが故障してしまいました。これでは番組が撮れません。キャシーは先に探検してくると言い出し、本当に先に行ってしまいました。怖いもの知らずですね。キャシーの後を追いかけましょう。ここから操作することができるようになります。


ゲームは一人称視点で展開します。天井に這うケーブルや壁に貼られた広告などがいい味を出していますね。本作の舞台となる九龍城砦は、香港の九龍城(地区名)に建てられた巨大な集合住宅で、いわばスラム街のようなところです。違法建築に次ぐ違法建築でどんどん巨大化していき、倒壊の危険もあるため1993~1994年に取り壊しが行われました。現在では公園になっています。


周りが本格的に暗くなってきました。パッドのRBでフラッシュライトを点灯させることができます。実際の九龍城砦内もこのように、迷路のように入り組んでいます。火事が起こったら逃げ場がないので、ここに住むのは怖いですね。

キャシーを追え



曲がりくねった道を奥まで進んでいくと、ドアを見つけました。しかし開けることができません。「スイッチを探せ」とのことです。ドアのそばに赤いボタンがありますが、これはスイッチではないようですね。別の場所を探してみましょう。


道を戻ると、くぐり抜けられそうな場所を見つけました。Xボタンを押すとしゃがみ移動ができるようになります。奥の方に電源ボックスが見えますね。スイッチはあれのことでしょうか。


これがスイッチ、というかレバーですね。Aボタンでレバーを下げ、電源を起動させます。これで先ほどのドアが開いたかと思います。


振り返ったら……ヒイッ! キャシーがいました。普通にビビりました。筆者はビックリ系のホラーが苦手なので、こういうのは本当に心臓に悪いです。お化け屋敷にお金を払って入る人の気持ちがまったく理解できません。

キャシー曰く「次のステージに行く鍵を見つけた」とのこと。どうやらこの番組は、あらかじめスタッフが謎解きパズルを用意して、それを解きながらゴールを目指すという趣旨のようです。


次の瞬間、急にキャシーが通路の奥へと引っ張られ、消えてしまいました。今度は本当の心霊現象のようです。キャシーを助けるため、急いで後を負いましょう。


先程開かなかったドアが開いていたので、奥へと進んでいきます。通路が狭くて怖いです。コレは絶対に横から出てきて脅かすやつです。視線を微妙にモニタの外へそらしながら恐る恐る前進します。


特に何かが出てくることはなく、ドアを開けてどこかの部屋に到着。調べられるオブジェクトの上には、目のマークが表示されます。缶を調べてみると、中に鍵が入っていました。


缶のそばにはメモがあります。本作で拾ったアイテムやメモの内容は、Yボタンを押してインベントリを開くことでチェックできます。アイテムは持っているだけで、適切な場所で自動的に使ってくれます。


鍵を使って部屋の奥のドアを開け、さらに進んでいきます。廊下にはリンゴやご飯が置かれています。これは前述した盂蘭節の風習で、霊が悪さをしないよう食べ物を供えているのです。しかし、そろそろ出てきそうですね。

死にゲーの始まり



通路の一番のドアを開けると、ひと目で分かるヤバさの部屋にたどり着きました。壁は血だらけです。部屋を調べてみると、メモ書きぐらいしか目ぼしい物がありませんでした。いったん戻りましょう。


部屋を出ようとしたときに現れたのはキャシー。しかし明らかにゾンビ、というか香港的にはキョンシー化しています。ちなみにキョンシーは広東語の発音で、中国語ではジャンスーと言います。ゾンビも中国語ではジャンスーです。


キャシーが追いかけてきました。鬼ごっこの始まりです。RTで走ることができますが、思ったよりアーロクは足が遅いです。通常移動よりちょっと速いぐらいですね。


通路の奥まで行くと、金網があって通ることができません。Aボタンを押して開けようとしても開かない。詰んだ?


後ろからキャシーが追いついてきました。捕まってそのままゲームオーバー。いきなり死にましたね。そういえば、ここまで来る途中にタンスがありました。そこに隠れればいいのでしょうか。


本作はチェックポイントでオートセーブされます。キャシー登場のシーンからやり直しになりました。先程と同じように追いかけてきますので、走って逃げます。前方にタンス。ここを右に曲がったところに先程の金網があります。しかしここは通路が一直線ですし、タンスに隠れてもバレバレのような……。


とりあえず隠れてみたところ、キャシーはスルーして先程の金網の方へと向かって行きました。タンスから出てみると、キャシーの姿は消えていて、金網のドアが開いていました。キャシーが開けてくれたようですね。これで先に進めます。


医者の名前のある看板。奥の方に歯医者があるみたいです。実際の九龍城砦内でも、歯医者やら食品工場やらいろいろな施設がありました。特に歯医者がやたらと多く、歯医者の看板だらけだったと言います。日本も台湾もそうですが、アジア圏は歯医者が多いような気がします。


歯医者の治療用の椅子があります。部屋の壁際にはたくさんの入れ歯が並べられていました。メモによると、ここを経営する歯医者は無免許なのですが、入れ歯作りが上手く、多くの高齢者に感謝されていたようです。


治療室の奥の部屋へ向かいましたが、ドアが開かなくて通れません。いったん治療室に戻ります。ソファーの上に写真か何かがありますね。拾ってみましょう。


写真を拾った途端、キャシー来襲! そしてまたもやゲーム―オーバーです。治療室でモタモタしていたのが悪かったのでしょうか。今度は再開と同時に急いで写真を拾ってみましたが、それでもキャシーが登場してまたゲームオーバー。写真がトラップになっているようです。


治療室の奥にタンスがあったので、しばらく隠れているとキャシーが通り過ぎてくれました。先程と同じパターンで、ドアも開けてくれたようです。先に進むこともできますが、いったん戻って写真を回収します。


進んでいくと、キャシーが通路を巡回していました。足音を立てると気付かれるので、Xボタンでしゃがんで、視界に入らないように進んでいきます。ステルスゲームっぽくなってきました。


発電機を見つけましたが、ハンドルがないので起動させることができません。別の場所で見つけてきて起動させたところ、音を聞きつけたのかキャシーが部屋に入ってきました。そしてまたゲームオーバーです。


部屋の扉が閉められることに気付き、閉めてから発電機を起動。しかしドアが壊されそうです。木の板を探して補強しようとしましたが、間に合わず、またまたゲームオーバー。この死にっぷり、以前プレイレポートをお届けした『影廊』を思い出しました。


3度目です。発電機起動後に急いで板を見つけ、それを扉に取り付けます。終わったらまた急いで発電機に戻って起動を続けます。今度は上手くいったでしょうか?


クレーンが動いて床の鉄板が持ち上げられ、地下通路の入り口が現れました。ここに降りろということでしょう。果たして、この先にいったい何が待ち受けているのか? この続きはぜひとも自身の目で確かめてみてください。

九龍城砦を探検できる鬼ごっこホラー


本作で描かれた九龍城砦はなかなか臨場感があり、筆者としては風景やオブジェを見てるだけでも楽しめました(キャシーさえいなければ)。台湾のインディーデベロッパーRedCandleGames(赤燭遊戲)が開発した『還願』にも似たテイストでしたが、こちらは諸事情で配信中止になりました(ゲームの詳細は「中華ゲーム見聞録」第28回目を参照)。

実を言うと、本作にも危うい部分がありました。中国語ではインディーゲームのことを「独立遊戯」というのですが、公式Facebookの投稿のハッシュタグに「#香港独立遊戯」という記述があることをフォロワーに指摘されたようです。現在その投稿は「#香港遊戯」になっています(ただそれ以前の投稿に対しては、ハッシュタグの修正はされていません)。

ただ単に「香港インディーゲーム」という意味なのですが、『還願』の例がありますし、香港もセンシティブな時期なので、政治的な内容は入れないようフォロワーから心配されていました。開発者は政治的な意図はないことを表明しています(注)。
注:この件に関してや香港情勢の補足として、筆者のブログで詳細記事を書いたので、興味のある方はご一読ください。


また、本作の九龍城砦の作り込みようは素晴らしいのですが、最適化不足なのか筆者の環境では結構酔いやすく感じます。そして音量調整が上手くいっていないようで、場面によっては急に大きな音が鳴ったりします。ヘッドフォンを付けてプレイする方は注意したほうがいいでしょう。何にしろ、一人称視点で九龍城砦内を探索できるのは楽しいので、『クーロンズゲート』が好きな方はぜひともプレイしてみてください。

製品情報


※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、繁体字を日本の漢字に置き換えています。

■筆者紹介:渡辺仙州 主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「中華ゲーム.com」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。新刊「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)。Twitterはこちら

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January 12, 2020 at 04:00PM
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