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世界で2番目に大きい電波望遠鏡、修復不能で57年の歴史に幕 - MITテクノロジーレビュー

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全米科学財団(NSF)は、プエルトリコにある直径約305メートル、重さ900トンの電波望遠鏡である、有名なアレシボ(Arecibo)天文台を閉鎖すると発表した。アレシボ天文台を57年間使用し、膨大な量の宇宙と大気の研究をしてきた天文学コミュニティにとって、大きな打撃となる。

アレシボ天文台は、2017年のハリケーン・マリアや2020年1月に数回発生した地震など、さまざまな嵐や他の自然災害による損傷に数十年にわたり耐えてきた。しかし2020年8月に、支えとなるケーブルがソケットから滑り落ち、主鏡に長さ約30メートルの裂け目が生じた。エンジニアたちはこの問題は安定しており修復可能だと判断したが、11月6日に2本目のケーブルが完全に破断した。新たに断線したケーブルは前回断線したケーブルと同じタワーに接続されており、数か月にわたりこの1本に余分な負荷がかかった結果、ついに切れてしまった。

エンジニアが破損状態を評価したところ、望遠鏡の構造体が「壊滅的な破綻の危機」にあり、いつ崩壊してもおかしくないことが明らかになった。この望遠鏡を運営するNSFは、アレシボ天文台を修復するのは、建設作業員とスタッフにとってあまりに危険だと判断した。修復が成功したとしても、長期的な安定性を保証することはできない。

2016年に中国の500メートル球面電波望遠鏡「FAST(Five-hundred-meter Aperture Spherical radio Telescope)」が完成するまで、アレシボ天文台は世界最大の単一鏡の電波望遠鏡だった。アレシボ天文台は数十年にわたり、とりわけ遠くにある惑星、月、地球の近くにある小惑星のレーダー観測など、他の望遠鏡ができない観測方法で大気と天体を観測できる唯一の天文台だった。電波ビームを太陽系の天体に向けて放射し、はね返っててきた電波を受信することで天体の構造や動きを確認できる、地球上にある数少ない天文台の1つでもあった。

アレシボ天文台の最も注目すべき功績として、中性子星が存在する証拠の発見小惑星の史上初の直接画像化初めて特定された太陽系外惑星の主星であるパルサーの発見などが挙げられる。

アレシボ天文台は地球外知的生命体探査(SETI)の普及にも大きく貢献した。1974年、科学者らはアレシボ天文台を使って、地球から2万1000光年離れた球状星団M13に向けて、存在するかもしれない知的生命体とコミュニケーションをとる目的で、1679ビットから成る星間電波メッセージを送信した。このメッセージは「アレシボ・メッセージ」と呼ばれている。

公平な観点から見ると、FASTをはじめとする新しい観測施設の登場により、アレシボ天文台の重要性は近年低下していた。アレシボ天文台の閉鎖は電波天文学に穴を作るが、他の多くの観測機器がその穴を埋められるはずだ。また、NSFが閉鎖を計画しているのは、直径約305メートルの望遠鏡のみであり、宇宙の天気や磁気圏の相互作用の研究に重要なライダー(LIDAR:レーザーによる画像検出・測距)施設など、アレシボ天文台の他の施設はそのまま残される。

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