昨今「ゲーマーグランマ」など高齢者のゲーマーが人気を博している。そんな中、なんとカルト的人気の名作であるFPS「S.T.A.L.K.E.R.」シリーズを愛してやまない古老がいる。「総プレイMod数が200から300にのぼっている」という御年78歳のゲーマーだ。ゲームをやる高齢者は確かにいるがModを使ったプレイをしている人なんてそうそういない。しかも「S.T.A.L.K.E.R.」だ。しかしいるのだ。それが中村清治こと「Hal」氏。

「S.T.A.L.K.E.R.」とは3部作からなり、チェルノブイリ原発が舞台となるウクライナのFPS。ストルガツキー兄弟の小説『ストーカー』やタルコフスキーによる映画『ストーカー』とは直接的な繋がりはないものの「ボルトを投げて危険地帯をすりぬける」などエッセンスを借りている作品だ。そして異様なまでに暗く地味な世界観は万人受けを拒むような独特のムードを持っておりそれに惹き付けられる者も少なくない。筆者も「S.T.A.L.K.E.R.」の大ファンだ。
またModとはPCゲームを改編するファイル群であり、ものによってはストーリーやゲームプレイそのものを変えてしまうものまである。「自分好みのゲームツクール」みたいなものだと思ってほしい。
筆者は以前からHal氏のブログ「ハルだから……」の愛読者で気まぐれにコメント欄に感想を書き込んでは交流を図っていた。あのModがおもしろいだの今はこのModをやっているだのコメント欄でやり取りをしていたが、いつぞやインタビューができればおもしろいのではないかと思い、コロナ禍の現在、対面ではなくネットや電話を使ったインタビューができるということでさせていただいた次第。今回うかがえた話は一言でいうと「愛に尽きる」といった内容だが「S.T.A.L.K.E.R.」に興味はなくとも「老いてもゲームを遊びたい」という人にはぜひ読んでいただきたい。
――本日はよろしくお願いします!
Hal:こちらこそよろしくお願いいたします。自画像はとどきましたか?
――届きました。まさからLeilaさんだったとは(笑)

Hal:はい、JC時代のHalの姿です!
――お若い姿でした(笑)
Hal:あれを見ると、年取ったなぁ……と痛感しますです。
――スーツ姿がとってもお似合いでしたね(笑)それではさっそく自己紹介をお願いします。
Hal:元々はAV機器系のテクニカルライターなどをしていました。1981年にPC8801を購入したのが、パソコンとのなれそめです。ゲームとの出会いは、1980年代に「ザ・ブラックオニキス」というPCゲームをプレイししました。こんな面白いものが世の中にあって良いものかと、毎夜没頭しておりましたね。その後はAV機器系のテクニカルライターなどをしていました。趣味がこうじて、ついにゲーム制作会社を設立、美少女ゲームを作るようになってしまったのです。

Hal:その後、丁度大震災のあった時、プレイしていたのが「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」で、原子炉の形式は違いますが、ゲーム内の原子炉建屋と、福島の原子炉建屋がよく似ていることに驚きましたね。
――Halさんといえば「S.T.A.L.K.E.R.」の生き字引として知られています。
Hal:元々、ストルガッキー兄弟の小説やタルコフスキーの映画の熱烈なファンだったので、S.T.A.L.K.E.R.をプレイする前から、「多分このゲームにはのめり込むだろうな」と思っていましたが、案の定その通りになってしまいました。S.T.A.L.K.E.R.のModは、おそらく200以上はプレイしましたが、最近はプレイしたいModが完全になくなってしまい、現在はエルフ版「御神楽少女探偵団」シリーズをやっています。
――本業の美少女ゲーム業の方は今はどうなっているんでしょう。
Hal:ゲーム制作は大変面白く素晴らしい仕事ですが、いやなこと哀しいことも多数ありました。心の友を失ったこともその一つです。本業は今や虚業と化しています。開店休業、休眠会社ですね。
――なるほど。少し話題は変わるのですが、普通は老いるとゲームをやらなくなると思うんです。なのにどうしてできるのか、もっといえばModを使ったプレイもされており造詣が深い。その情熱を探りたいです。
Hal:これはやはり「S.T.A.L.K.E.R.」との出会いが全てでしょう。1つのゲーム、複数のModではありますが、それを十数年続けてプレイしたことはそれまでにありませんでしたし、これからもないと思います「S.T.A.L.K.E.R」.のように、ひとつのテーマが、小説・映画・ゲームと異なるジャンルで、それぞれ最高の名作であるというのは、非常に希有なことでしょう。
Hal:「S.T.A.L.K.E.R.」プレイの喜びは、単にシューティングゲームの楽しさだけではなく、全体の雰囲気、例えば荒廃しつくした地下研究所の不気味な描写、ウクライナの樹林帯に沈む夕陽の美しさなど、心情的に迫るものがあるのです。このあたりは「Metro」シリーズや「Fallout」シリーズとも一脈あい通じるところですね。

――少子高齢化の時代にこれから年を取ったゲーマーはもっと増えるでしょう。苦労することや老いゲーマーあるあるみたいなものをうかがわせていただければと。個人的にはブログで綴ってらっしゃったような「フォントサイズを特大にする」というのが印象的でした。
Hal:苦労は、面白いゲームは中々ない、というところでしょうか(笑)。歳を取るとどうしても小さい文字が読みにくくなります。最近マイケル・クライトンを読み直しているのですが、文庫版の場合、文字が小さく疲れます。PCでもフォント設定で大中小の「大」でもまだ小さく、特大に設定してようやく読めるようになりました。ところが、一部のユーティリティツールなどでは、特大フォントだと設定部分の一部がはみ出して切れてしまい、設定ができないことがあります。その場合は、一旦フォント設定を「大」に戻すわけですが、これは一々ログオフ・ログオンしなければならず、面倒です。ログオフ無しで特大設定ができれば良いのですがねえ。
あるいはツールの方で、最大最小サイズの設定ができるようにするとかです。私の場合、最新のゲームというのはほとんどプレイしません、今手元にあるもので最新のゲームは『メトロ エクソダス』ですが、これも1年前のゲームです。むしろ『御神楽少女探偵団』とか『クロス探偵物語』とかのレトロゲームの方がプレイ機会は多いです。そのために、ドライブが不調で読み込みができなかったPS3とPS2を、レンズ部分をアルコールで清掃し、読み込み可能にしたりもしました。
――「面白いゲームは中々ない」というの、含蓄に富んでいますね。ちょうど我々ゲームライターのコア層って30代40代で、私自身これから50代にも手が届くのをなんとなく感じ始めています。Halさんご自身は40代50代のころはいかがでしたか? ゲームに向き合っていく態度というのは変化していったのかなと。
Hal:まあ今とあんまり変わらないですね(笑)。ただひたすらおもしろいものをプレイしていて、当時は「貧者の幸せ」というか、ないんですね、まともなゲームが。『ザ・ブラックオニキス』はつい最近2、3年前にもプレイしていておもしろかったです。ただ当時と今とで状況が違いますしね。やっぱりおもしろいものをプレイしていたんですが、ゲームに対する姿勢などもまったく変わってないですね。私はもともと小説描きを志していたことがあり、ストーリーモノに惹かれるんですよ。それを別としてもコンピューターゲームというのは自動的じゃなくて能動的で、映画や本とは違います。ゲームが反応を返すのが楽しくてしかたなかった。といってもそれは今も変わりありませんが(笑)
――Halさんのブログのゲーム遍歴の方も興味深くて、あの遍歴に書かれている感想や評価ってハードコアなゲーマーのものと割と一致していますし、確かな審美眼がある。だからこそ私たち若輩者にとっていい道しるべになるのではないかなと思って質問させていただきました。Halさんといえば「S.T.A.L.K.E.R.」シリーズのプレイヤーとして著名ですがこれまでにいくつくらいのModをプレイされてきたのでしょう。
Hal:「S.T.A.L.K.E.R.」のModは、恐らく200から300の間位はやっているかと思います。「Fallout」のModは100以下でしょうね。
――案外「S.T.A.L.K.E.R.」以外の作品もたくさんプレイされているんですよね。しかしそれでも1つのゲームに対する愛を十数年持ち続けてプレイしているのはものすごいことですよ。
Hal:そもそも「S.T.A.L.K.E.R.」そのものが小説も映画も大好きだったしプレイする前からこれにはハマるだろうなと思っていましたが、それがまあ十何年も続けるとは思ってもいませんでした(笑)
――記憶に残っているModってありますでしょうか。Halさんは「奇怪翻訳」と称して機械翻訳にかけてModを遊んでらっしゃいますが。
Hal:「奇怪翻訳」というのは、当時の機械翻訳は意味がわかる部分が精々30%、後はまるで意味不明というのが普通でした。それでも「stalker dialog helper」という連続一括翻訳ができるツールがありまして、それをバイナリ改造で無理やり日本語対応にして翻訳しておりました。
――そのプレイに対する情熱が個人的にはうらやましく映ります。ゲームを遊びたいと思っているはずなのにパッと隙間時間ができたとき遊べないこともあって。これから『S.T.A.L.K.E.R. 2』に期待したいものはいかがでしょう。
Hal:2021年となりますと、まだ大分先のことになります。元々年のわりには身体能力もあまり落ちず、元気な方だったのですが、最近はめっきり「老い」を感じるようになりました。ちょっとジョギングしてもすぐ息が上がり、疲労の回復も遅くなってきています。ですので『S.T.A.L.K.E.R.2』の発売迄もつかな……というのが実感ですね。
Hal:内容的には「S.T.A.L.K.E.R.」は第1作の『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl』で語り尽くされていますので、2となりますとかなり微妙な所です。期待半分、恐怖半分、もし今までのイメージとまるで違うものになっていたらどうしよう……というところです。
――世のスタルカーたちも期待半分でみているかもしれません。手放しで褒められる自信がないようなタイトルだからこそ魔性の魅力を持っているタイトルだと思いますので。それでは最後にIGN JAPAN読者に向けて先人のゲーマーとして一言あればお願いします!
Hal:IGN JAPAN読者様には、「老人よ、大志をもて! そしてゲームをやろう!」と……
――長時間ありがとうございました!
ではではグドハンテンスタルカア!

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May 17, 2020 at 02:00PM
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『S.T.A.L.K.E.R.』の生き字引、古老ゲーマーHal氏御年78歳!プレイMod数300の彼に老いてもやまないゲーム愛を聞く - IGN JAPAN
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