新型コロナで時々刻々と情報が更新されるなか、テレビは最新の情報を届けてくれる。
4月12日(日)の午前中も医療関係者が現場の実情を訴えた。
そのいくつかは、日本でもイタリアやアメリカ同様の「医療崩壊」が始まっていることを示していた。
筆者自身も衝撃を覚えた。こういう時期にテレビが何を伝えるべきなのかを考えながら。日曜日の朝にテレビ番組が伝えた内容を振り返っておきたい。
テレビの報道番組や情報番組の持ち味はと「現場性」と「生放送」ということである。
映像として「現場」を記録したVTRでリアルな現実を伝えるとともに、スタジオや中継などで「生」で最新情報も伝える。それが最大の強みだ。
この日、医師や看護師らがそれぞれの現場について「告白」した内容は衝撃的だった。
それは、日本ですでに「医療崩壊」が始まりつつあるという信じがたい現実だった。
TBS『サンデーモーニング』
アメリカ・ニューヨークの病院の集中治療室の映像を放送した。
医師が医療用のゴーグルを入手できずに「スキー用のゴーグル」を着用している姿や看護師たちも防護服の替わりに「透明のゴミ袋」を身につけていた。
すでに医療崩壊が進んでしまっていると言われるニューヨークである。
しかしこうした状況が日本でも起きているという。
番組では横浜市内の中規模病院を取材した。
発熱した患者の診療を断る医療機関が多いなかで受け入れを続けている。
だが新型コロナを疑ってPCR検査を求めても進まないの現状だと告白する。
(横浜の病院の感染対策委員長・瀧田渉医師)
「われわれが診療してコロナの疑いのある人はPCR検査をぜひやっていただきたい」
「実際にスムーズに流れていない」
PCR検査も進まない、防護服なども不足するなかで感染しているかもしれない患者と向き合わなければならず、医療スタッフも頭を悩ませながら患者と応対する日々だ。
瀧田医師が自ら撮影した映像は衝撃的だ。
病院の入り口に看護師が消毒液を手に立っている。顔にはフェイス・シールドとマスクを着用して、白衣の上に青い防護服のような服をさらに着ている。
実は看護師が身につけているこのフェイス・シールドは手作りだった。
手術場の看護師らが隙間テープとパンツのゴムとクリアファイルで作っていた。
その様子を瀧田医師がビデオで撮影している。
すでに病院には在庫はなく、手作りのものを用意していた。
マスクを作っている映像も紹介されていた。
(瀧田医師のビデオ撮影での一人語り)
「枯渇するかもしれないので布マスク対応です。
手術用にかけていた布で同じようなものを作るかどうかトライアルでいまやっている状態です」
(瀧田医師のビデオ撮影での一人語り)
「ガウンに関しても、もうほぼ入ってこないようなので、
割烹着で闘うか、予防着ですね。
この古い布タイプの予防着をいま発注していますが、
これも入ってこないですね」
マスクも防護服も備蓄がほとんどない現状だという。
この病院を取材したのは4月10日(金)だ。
青い防護服にスプレーをしている映像が登場する。
(横浜の病院の感染対策委員長・瀧田渉医師)
「ガウンなんかも本当に強い(コロナ感染の)疑いというときだけは捨てますけど、
そうでないものに関しては、もう1回アルコールと次亜鉛酸スプレーをして一晩干して再利用しています。
というのは1枚も入ってこないですから、この1か月」
限られた資材でやりくりし、ギリギリで対応を続けている病院側の厳しい現状を伝えていた。
瀧田医師が撮影した映像では、コロナに感染している患者はこのエリアにと赤い線を廊下に記して区分けしていても、感染した患者が一般の区域に入ってきたり、さらに救急搬送された患者や救急隊員がそこに急に入ってくる様子が映し出されていた。
感染した患者と一般の患者が通るルートを分けても完全な分離は実際にはなかなか困難だ。
実際に「喘息が悪化した」として一般のルートで受診した患者がその後に新型コロナ感染が見つかった事例もあって、その後に医師や看護師も2週間経過観察のために現場を離れたという。現状では院内感染は起きておらず、医療崩壊はまだ起きていないがギリギリだという。
医療現場で、感染者(の患者)と非・感染者(患者)を分けることはかなり困難な様子が伝わってきた。
ましてやマスクやフェイス・シールドを看護師たちが手作りしていた。もちろん本来の看護の作業の合間を見て作るのだ。どれほど過重な労働であることだろうか。
この後、番組では栃木県宇都宮市の呼吸器内科の倉持仁医師とビデオ通話をつなげて、生中継で横浜の映像をみた感想を話してもらった。
(倉持仁・「インターパーク倉持呼吸器内科」院長)
「こういったことは普通にどこでも起こっていることなので、そういうことをわかってもらうことは非常に大事なこと」
倉持医師が現場の医師として訴えたことは重要だ。
「国や自治体から医療機関に対しての、診断の流れなどの”指針”がきちんとできでいない」
「1か月前からやっていなければいけないことが、いまだになされていない」
倉持医師が話した内容をまとめると以下のようになる。
軽症の患者をどこの病院が診るのかという整備も、たとえば装備がない、マスクがないとなると、一般の開業医の医師は患者を診ることができない。そういう状況で(栃木県の)私のところにも昨日も13件断られたという人が埼玉県からわざわざ診察に来た。そういう人が5人くらいいた。それが現状なのにそうした危機感がまったく自治体や国に伝わっていない、という。
倉持医師はこの後で次のような言葉でいまの気持ちを表現した。
「こうした追いつかない状況をみて、やっと動いて、ギリギリギリギリで、ずっとやっていこうとしているという(政府や自治体などの)姿勢がとてもがまんならない。至急改善して、とにかく危機感をもって・・・」
その後の倉持医師の言葉は現場の医師としての実感を伝えていた。
「必ずニューヨークとかイタリアのように残念ながらなりますから、大至急仕組みを整えないと間に合わない」
医療の現場からの切実な声だった。
「医療崩壊」という言葉がいままでの通常な形の医療ができなくなっているという意味であるなら、すでに現実のものになりつつあることが伝わってきた。
日本テレビ『シューイチ』
『サンデーモーニング』と同時間に放送していた日本テレビの『シューイチ』にも感染症を専門とする医師たちが登場したが、看護師という職能団体である日本看護協会の福井トシ子会長とビデオ通話で生中継を結んでいたのが目を引いた。
看護師という立場でも病棟での勤務のローテーションが回らない現状を伝えた。

(福井トシ子・日本看護協会会長)
「看護師が置かれている状況をお伝えします。
ある病院の一つの病棟の例だが、呼吸器専門の病棟で50床。
50人の患者さんが入院できる病棟があり、そこに10人の新型コロナの患者がいる。
そうするとその10人の患者を診る看護職を別に配置しなくてはならない。
その別に配属される看護職は新たに選抜される。
誰も新型コロナの患者を診られるかというとそうではない。
どういう看護職が対応できるだろうかと考えると、
一人暮らしをしている、とか、配偶者や子どもがいない、とか、そういう方が選抜される。
そうなると病院の中でも分かれた形で看護職が働かないといけなくなりますので
とてもストレスフルな状況になっていて
精神的も身体的にも、そして社会的な距離感もありますので
疲弊している状況にあります」
医療現場で「子どもや配偶者のいない」看護師が「選抜される」という話を聞いて、筆者の頭をよぎったのが、2011年の福島第一原発事故の後での放射能高線量地域での取材体験だった。
あのときはメディア企業も「線量計」を携帯させて記者などの取材スタッフを現地に送り出したが、「これから子どもを作る可能性がある若い人間」特に「女性」は極力避けるようにして、また本人がどうしても行きたくない場合は取材メンバーから外した。つまり、ある意味では「志願者」ばかりの取材スタッフだったわけだが、新型コロナで看護の現場でも同じようなことが起き、今度は「子どもがいない」「配偶者がいない」などの条件で「選抜される」と聞いて驚いた。
つまり「独身」の看護師たちが新型コロナ担当に選抜されている実態があるのだという。
(福井トシ子・日本看護協会会長)
「重症の新型コロナの患者だとICU、集中治療室で治療することになりますが、
日本の今の仕組みですと、2人の患者さんに対して一人の看護師がケアをするということになっています。
ですけど感染症の患者には防護服、たとえば宇宙服のような服がテレビなどに出てきますよね?
あれを防護具と言っているんですけれど、あのガウンを着て患者にケアをするわけですが、
あの防護具を脱いだり着たりというのがすごく時間がかかる。
通常ですと2人の患者に1人の看護師がいるんですが、
新型コロナの患者を診るときには防護具を着て2人の看護師がそのケアに当たります。
防護具を脱いだり着たりというのが大変なので、
それをさらに補助する人が必要になる。
ですので、いま『2対1』で看護師が出ていたところに、
さらにそこに人数を増やさなければならないので4倍は必要になる。
あの防護具を脱いだり着たりするにも大変に手間暇や時間がかかってお手洗いもがまんしてしまうような状況にならざるをえない。
そこに4倍の看護職が必要になるので
一般の病棟から看護職がそちらに行って移動してケアをすることになる。
一般の病棟の患者のケアが手薄になることがいま起きています」
これを受けてスタジオでの「医療崩壊」について議論が行われた。
(中山秀征キャスター)
「新型コロナウイルスの患者にすべてが取られてしまうとなると
必要な医療を提供できないということになってきますよね?
これは医療崩壊と言っても過言ではない?」
(コメンテーター・精神科医の名越康文氏)
「本当にそうなんです。手術を受けなければならない人がどんどん後回しになっていくとも聞く。
医療崩壊というのは言われたようにコロナだけの問題じゃなくて
それで他の治療が遅れていくというのが本当の医療抱懐。
それは本当の本筋だと思います」
福井会長は看護師を一度リタイアした人に復職などを呼びかけて人員不足をカバーしようとしていることなど現状を話した後で、政府や自治体への要望も口にした。
(福井トシ子・日本看護協会会長)
「重症の患者が増えてくると、たとえば人工呼吸器を使える医師・看護師も必要ですし、さらにECMO(エクモ)と呼ばれる人工心肺装置も医師も看護師ももっと必要になってくる。
そういうチーム編成を早くしていただいて
オーバーシュートしないことをもちろん期待していますけれども、
そうなったときに備えたチーム編成と教育を急いでいただくことが必要かと思っています。
それから防護具を含めた衛生材料ですね。感染症の多い患者がいるところには優先的に配布しますということは聞いていますが、
そうではなくて、いまどの病院でもリスクが高くなっていてそういう用具は必要とされていますので、
すべての医療機関に、優先順位をつけてということではなく、すべての医療機関にそういうものを配布していただいて、
医師も看護職も安心して、そしてその他の病院で働いている職種の人たちが困らないような環境をぜひ作っていただきたい。
このことは新型コロナと、ウイルスと、闘う武器でもありますので、
ぜひこの確保を急いでいただきたいと思っています」
日曜日の朝、TBS『サンデーモーニング』と日本テレビ『シューイチ』が伝えた医療従事者からの切実な声。
日本でも現場では医療崩壊がすでに始まっていることが伝わってきた。
現場からの声は最後は、医師も看護師も「政府」 「自治体」の迅速な対応を求めていた。
この真剣さにどう向き合のかは政治の問題だ。向き合わない政治家ならば選挙で退場してもらうしかない。
こうした緊急事態にあっては、日々患者たちと接触する医療現場の率直な声をきちんと国民に届けるのがテレビ番組の役割だ。
どちらの番組ともやるべき役割を果たしていたが、ぜひこの先もこういう現場の医療従事者からの生の、切実な声を届けてほしい。
"パンツ" - Google ニュース
April 12, 2020 at 11:07AM
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