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格ゲーは対人戦が一番楽しい―― それは「格ハラ」する側の言い分だ。『UNDER NIGHT IN-BIRTH』で1人用格ゲーをはじめよう - IGN JAPAN

なぜ新作の格闘ゲーム(以下、格ゲー)が発売するたびに「格ゲー初心者の心構え」が話題にあがるのか。そんなもの、わかりきっている。対人戦をしなければよいのだ。

『The King of Fighters '98』(Google Play版

柔道では練習初日に乱取り(自由に立ち技を掛け合う稽古)をしない。危ないからだ。筆者の体験では、まずは受け身の型を学び、正しい投げ方(と対応する受け身の取り方)を身につけた。もちろん基礎体力の向上もとりくみ、体の事故を防いでいった。言うまでもなく武道にたずさわる精神も学んだ。正面に礼、お互いに礼。

eスポーツでも事故はある。心の事故だ。圧倒的な力量差。プレイスタイルの相性。わからん殺し。プレイ中の挑発行為。ゲーマーコミュニティ。それら不快感との向き合い方に失敗すると、ゲーミング人生にかかわる事故がおきる。それなのに、なぜ、格ゲーを始めて1週間もたたないうちにランクマッチへ挑むのか。

格ゲーのジャンル史にあかるい読者なら、心の事故がおきる現状を「習わし」と感じているだろう。確かに…仕方がない話だ。前世紀の格ゲー流行時はアーケードが主戦場ゆえ、初日から対戦するものであった。また、すぐれた指導者と巡り会うのは極めて難しく、学友やゲーセン仲間と切磋琢磨するほかなかった。それらに付随するドラマが格ゲーをとびっきりのゲームにしてくれるのだが―― リュウのように気高く挑むのは難しい。

『Street Fighter III: 3rd Strike』(『Street Fighter 30th Anniversary Collection』

だからどうか、格ゲー初心者は1人用を楽しんでほしい。ゲームを大好きになるところから始めてほしい。ストーリーモードでキャラクターにほれこみ、COMプレイヤーの難度を調節してからマイキャラクターを動かしてほしい。プレイアブルキャラクターを画面に大きく映したアクションゲームは格ゲーだけだ。だから動かすだけで楽しめると保証しよう。さらに、その先の楽しみがあると約束しよう。

ちょうど都合良く「次の」最新格ゲーがある。2020年2月20日発売の『UNDER NIGHT IN-BIRTH Exe:Late[cl-r]』(以下、UNIcl-r)を記念し、本稿は「格ゲー初心者の心構え」という目線でシリーズの魅力を紹介する。格ゲー有識者ならば、間違っても本作を初心者に勧めないが…… シングルプレイに限定すれば話は別だ。改めて考えれば、これこそが1人用格ゲーの極北である。

アイワントんゆー!

『虚無』という名の怪物が跋扈し、『顕現<イグジス>』という名の常ならざる力で満ちた空間。『夜』に魅入られ、立ち入ることを許された者達は、人為らざる命を持ち、超常の力を行使する者。新たに誕まれ落ちた者として、『偽誕者<インヴァース>』と呼ばれていた。(公式マニュアルより転載

独特のバックボーンとそれを彩るアートワーク。「UNDER NIGHT IN-BIRTH」(以下、シリーズ名をUNIと略す)を語るに外せないポイントだ。主人公ハイドの必殺技名が見事に体現しているので、声を出して読まれたし(恥ずかしくなったときは、この段落を読み飛ばしてもよい)。波動拳は「円環ノ凶渦<ブラックオービター>」。昇竜拳は「紅纏イシ闇ノ翼<レッドクラッドクレイヴァー>」。超必殺技は「終焉ヘ誘ウ螺旋ノ檻<ジャイルボルテクス>」。万事この調子で情報密度の高いスタイルを貫き通す。

本稿スクリーンショットは前作『UNDER NIGHT IN-BIRTH Exe:Late[st]』

さて、どうだろうか。意図せず他人の下着姿を目にしてしまった気まずさ。またはライトノベル原作の深夜アニメに感化された中学生が夢想のままに書いた日記を手にしてしまったかのような、気まずさ。もしくは、気まずさや恥ずかしさを越えたノリのよさか。

これがジャンル名: 正統派近代小説感覚2D対戦アクション<ピュア・ラノベナイズ 2Dヴァーサス アクション>だ!

男性キャラクターはスタイリッシュでかっこよく。女性キャラクターは気高く可憐で美しく。各々のビジュアルとストーリーが、プレイフィールと結びつくのも心地よい。「異形キャラだから腕を伸ばして投げよう!」や、「ムチ使いにガードさせて有利の斬空波動拳をつけよう!」といった、ノンブレーキの無法がそのままある。強い理由しか出てこない。弱い理由が見当たらない。めまいで頭がクラクラする。

格闘ゲーマーなら8年前にUNIショックを体験しており、免疫もあろう。だが他ジャンルのゲーマーからすれば異常事態だ。察しのとおり、それは1人用格ゲーの世界にいざなう強烈な導線となる。作中に数ある「なんだこれは!?」ポイントで最大の見どころが、独特のバトルデザイン「GRDシステム」だ。正式名称を用いて説明するのは難しいが…… 要点をまとめれば理解しやすい。実は、試合中にリアルタイムでプレイヤーを褒める、1人用格ゲーにうってつけのシステムなのだ。

格ゲーうまいマン(レディ)採点システム

バトルデザイン「GRDシステム」を正式名称で説明すると下記のとおり(頭が痛くなったときは、この段落を読み飛ばしてもよい)。戦況の優劣に応じグラインドグリッドが増減する。トランスファーステイトが1周した時点で、グラインドグリッドで勝る側がヴォーパル状態となる。攻撃力10%増加。攻防万能のチェインシフト。さらにクロスキャストヴェールオフで、インフィニットワースを連続技に組み込みやすくなる。このときヴァイタルヴェゼルが30%未満なら、インフィニットワースイグジストで劇的な逆転も狙える。

新作が発売前ゆえ、本稿は前作『UNDER NIGHT IN-BIRTH Exe:Late[st]』でGRDシステムを解説する(以下、UNIst。新作との違いは終章でまとめる)。有り体にいえば「格ゲーうまいマン(レディ)採点システム」だ。相手の攻撃をガードする。相手に技を当てる。相手を投げる。相手の投げを、投げ抜けする。これらに成功すれば、画面下部のひし形ゲージ「GRDゲージ」が増加する。そして約15秒ごと、画面下部中央の円メーターが1周した時点で、GRDゲージが勝る側は次の円メーター1周まで大幅な強化を得る。ガードが難しい攻め手や、大ダメージ連続技が可能となり、試合を決めてしまえるのだ。

GRDシステムは試合中の短期目標である。試合開始から円メーター1周までに、GRDゲージで相手を上回り強化を得よう。強化中は相手のガードをこじ開け、大ダメージ連続技を狙うべし。相手に強化されたときは、防御をかためてGRDゲージを増やし、次の円メーター1周で強化を得て反撃だ。このようにGRDゲージと強化をめぐる攻防が、戦況に応じたプレイングの指標となる。ゲーム側が試合運びのセオリーを教えてくれると思えばよい。

このGRDゲージを強調するため「UNI」はプレイしやすさを大胆に調整した。ほとんどのキャラクターが、見た目どおりに長いリーチと厚い攻撃判定をもつ。これで画面のどこでもヒット・ガードがおき、GRDゲージは常に増減する。また操作もかんたんで、Aボタン(弱攻撃)を連打すれば連続技~必殺技~EX必殺技まで自動派生する。小ジャンプやダッシュもボタンで出せ、めくり攻撃もない。レバーテクニックの簡略化にもGRDゲージを重視した意図がみえる。

以上で述べたGRDシステムは格ゲー初心者に試合運びを気付かせる恰好の仕組みだ。実は、これを無視しても面白い状況になる。かんたん操作+強キャラだらけの格闘ゲームになるのだ。苦労してキャラ性能を引き出さなくとも無茶苦茶強いので安心しよう。真空波動拳コマンドもなく、低空ダッシュをレバー入力しなくともよい。これなら格ゲーに不慣れでも、アクションゲームに心得があればなんとかなる。

全員強いので見た目が気に入ったキャラクターを選んでほしい。それで正解だ。第二次世界大戦中に消息を絶った旧日本軍の技官はどうだろう。演出がカッコイイぞ! それとも語尾の「んゆ」で格ゲーシーンに爪跡を残したミカちゃんはいかがかな? ここにライトノベル原作の深夜アニメを模したシングルプレイ用コンテンツが合致し、キャラクターの魅力はさらに引き立つ。正統派近代小説感覚2D対戦アクション<ピュア・ラノベナイズ 2Dヴァーサス アクション>とは、字面の印象どおりに本作の見どころを言い表したジャンル名なのだった!

ランクマッチなんかやらなくていい

「UNI」は対人戦も楽しい。GRDシステムをめぐる攻防はオンリーワンのプレイフィールで中毒性が高い。基本ルールは前章のとおりだが、GRDゲージを大量に得るガード方法「シールド」と、GRDシステム使用不可「GRDブレイク」がくわわり、対人戦の超高速駆け引きを奥深いものとする。是非対人戦を味わってほしい―― といいたいところだが。「相手のダッシュを投げ抜けコパン(しゃがみA入力後2フレーム以内にA+Dを成立)で止める」を、格ゲー初心者に要求するのは酷だ。

前章で述べたとおり、シングルプレイはそこまでしなくてよい。COMプレイヤー戦は難度設定が詳細で、腕前に合わせて楽しめる。最高難度は脱初心者を想定したつくりで、GRDゲージ増減の攻防が不可欠となる。この点は、連続技の練習モードやシステム解説が手厚いので安心されたし。目標は険しいが、そこにいたる道は舗装済みである。

『UNIst』のキャラクターコンテンツはジャンル最高級の品質だと保証しよう。COMプレイヤー戦のアーケードモードはキャラクター別のストーリーで、悲壮なシリアスからハーレムものコメディまで多彩だ。群雄劇のクロニクルモードはビジュアルノベルが10時間以上ある。どちらもフルボイスで人気女性声優も採用しており、深夜アニメファンの期待に応えてくれるぞ。

ここでキャラクターのテーマを描くBGMも推したい。どれも聞き心地がキャラクターイメージにマッチし、激闘にふさわしいバックボーンを奏でている。それらコンテンツを追うだけでも満足できるだろう。

「格ゲー初心者の心構え」か… 気に入ったキャラを使い、強すぎる相手と戦わなければ気楽に遊べる。丁寧な言い方をすれば、ゲーマー各々で成長速度は違うのだから、自分のペースで楽しめばよい。そのためのシングルプレイである。ジャンル近年作はシングルプレイ用コンテンツで手厚くサポートしているが、「UNI」はバトルデザインを通じて試合運びの指標を示したのがすばらしい。その試合運びこそが、タイトル固有のプレイフィールなのだから。さあ、新作『UNIcl-r』で格ゲーを始めよう。キャラクターを動かす魅力から一歩進み、1/60秒を競う超高速駆け引きに励まれたし。もし気に入ったなら、友達を誘って一緒に楽しんでほしい。

最後に、新作『UNIcl-r』と前作『UNIst』の違いをまとめる。変更点は新キャラクター1体追加+既存キャラクターのバランス調整だ。PS4版『UNIst』は2月20日にアップデートされ、無料で新作のゲームバランスを楽しめる。このとき新キャラクターはDLC購入となる。『ストリートファイターV』のシーズンアップデートと同じだ。

PS3版・PSVita版『UNIst』のアップデートはない。その埋め合わせで、所持者限定のPS4版『UNIcl-r』割引キャンペーンがある。期間は2020年4月30日まで。なおPC版のサポートは未定である。過去作は家庭用ゲーム機版から1年遅れで発売しており、今回も同様となろう。気長に待たれたし。

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February 17, 2020 at 06:37PM
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