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神の一手を閃かせる『Into the Breach』のゲームデザイン - IGN JAPAN

あなたは「神の一手」を閃いたことがあるだろうか。

囲碁や将棋などのアブストラクトゲームで起死回生の一手となるような素晴らしい手が「神の一手」と呼ばれることがある。窮地に立たされて苦しい状況でそんな一手を閃くことができたら、さぞかし気持ちよいことだろう。

筆者はこれまでそのような体験をしたことがなかった。しかし先日プレイしたゲームで神の一手を閃く体験をした。しかも何度もだ。

 

今回語るタイトルは『Into the Breach』。襲来する怪物たちから都市を守る戦略ゲームだ。このゲームで筆者は幾度となく窮地に立たされ、そしてそれを打開できるような神の一手を閃く体験も幾度となく味わったのだ。

本記事では『Into the Breach』のおもしろさの紹介と、なぜこのゲームで「神の一手」が生まれるのか、ルール設計の妙について解説をしていきたい。

「位置」に主眼が置かれたユニークな戦闘システム

『Into the Breach』の目的は「既定のターンの間、都市を守る」ことだ。怪物たちが都市を襲いにやってくる。プレイヤーはそれを阻止するため3体のメカを投入し戦いに挑む。

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このゲームはターン制で進行する仕組みだが、ターンの流れが少々ユニークだ。一般的なゲームでは敵のターンとプレイヤーのターンを交互に行うのが普通だが、本作では「敵の移動」と「敵の攻撃」の間にプレイヤーのターンが挟まる形となっている。

  1. 敵の移動と攻撃準備
  2. プレイヤーの移動&攻撃
  3. 敵の攻撃が行われる

このような流れだ。重要なポイントは「1の時点で敵が何をしようとしているのか確定している」、「そのことがプレイヤーに予兆として表示される」という2点だ。

 

このままだと建物が壊され、守るべき列車も大破し、自分のメカもダメージを受けてしまう。あと一刻しか猶予がないこの状況でプレイヤーのターンが回ってくるわけだ。1回の行動でこのすべてを処理しなければならない。もちろん普通に攻撃をして普通に怪物を倒せれば攻撃を止めることができるが一撃で倒せるとは限らない。

ではどうするかというと、このゲームの主役のシステム「ノックバック」の出番だ。ロボの攻撃には「殴った相手を後方に押しやる」、「捕まえた相手を引き寄せる」、「爆風で吹き飛ばす」といった風に、対象を強制移動させる効果のついているものが多くある。この仕組みを活用することで敵の攻撃位置をずらしてしまうことが可能なのだ。

虫型の怪物が左上の建物を狙っている。砲撃型ロボの攻撃力では倒しきれない。
虫型の怪物が左上の建物を狙っている。砲撃型ロボの攻撃力では倒しきれない。
しかし、あえて直撃させずにとなりのマスに打ち込むことで……
しかし、あえて直撃させずにとなりのマスに打ち込むことで……
爆風によって敵の位置とずらし、着弾位置もずらすことができた 。
爆風によって敵の位置をずらし、着弾位置もずらすことができた 。

このようにノックバックを活用して位置関係を変えることでピンチを打開することができるのだ。上記の例はベーシックなものだが、地形や他のユニットなどとうまく絡めることができれば一石二鳥の一手を打つことができる。

例えば吹き飛ばした先に山があったら山への激突ダメージを追加で与えることができるし、吹き飛ばした先が川ならば怪物を水没させて倒すこともできる。怪物同士の同時打ちを狙うこともできるし、貫通レーザーを持っていれば怪物の位置を揃えてからまとめて焼き払うといった芸当も可能だ。

ノックバック先に怪物がいれば両方に激突ダメージ。
ノックバック先に怪物がいれば両方に激突ダメージ。
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怪物の遠距離攻撃を別の怪物でさえぎってしまったりもできる。

ノックバック要素以外にも「そのマスで攻撃をできなくする煙幕」、「岩を設置して障害物にする」、「ダムを破壊すると一帯が水で流される」といったマス目の状態を変化させる要素が用意されている。とにかく位置関係に関わる戦略が重視されたルール設計となっているのだ。UIもわかりやすくまとまっており、誰でも直感的に仕組みを理解できるだろう。

盲点を生み出す「組み合わせ」のゲームデザイン

ここからが本題だ。なぜこのゲームで「神の一手」を閃く体験ができるのだろうか。

端的に言うと、閃きとはアイデアだ。そしてアイデアとは「組み合わせ」だ。結論から言おう。『Into the Breach』が神の一手を生むのは、ノックバックの要素と位置関係に関わる要素によって要素の「組み合わせ」が膨大な量になるからだ。

前述の例で言うと、「ノックバックで攻撃をそらす」+「そらした攻撃で別の怪物を攻撃させる」の組み合わせや、「ノックバックで攻撃をそらす」+「移動させた敵を盾にする」の組み合わせなどだ。誰をどこにノックバックさせるかによって戦況への影響がまるで変わるのだ。

さらに言えば、1ターンで3体のロボを動かすことになるため、「1体目のロボで怪物をノックバックさせることで2体目のロボが通れるようになる」、「2体目のロボで怪物をノックバックさせると怪物が縦に揃うので3体目のロボがまとめて敵を攻撃できる」といった複数ロボの行動による「組み合わせ」も生まれるため、1ターンの間にできることは思った以上に広がりがあるのだ。

このゲームは組み合わせによる一石二鳥を狙うのが基本となり、プレイヤーは自然とそれを狙うことになる。複数の問題を一気に解決できる素晴らしいアイデアを見つけることができたらそれもまた神の一手ではある。

ただ、一石二鳥をただ狙うだけではどうにもならない状況がある、というのがこのゲームのおもしろさだ。一石二鳥の手を考えて考えて、それでもまだ目の前の問題を解決できそうにない、そういう状態で頭を抱えることは多い。何か見落としがあるのではないか、まだ考慮していないやり方はないか。

そこでふと、本来やらないような変な行為をふと考える。例えば味方を攻撃したり、無関係な山を撃ったりするのはどうだろう? ははは、そんな事をしたってなんの意味もないよな……。

と、ここで脳内にパパパパッと光が灯り、起死回生の神の一手を閃くことがあるのだ。

状況によるが、味方をノックバックさせて怪物に激突させることで本来攻撃が届かない怪物へダメージを与えることができたり、山を破壊することで通り道を確保でき起死回生に繋がる状況もありえる。組み合わせの妙によって、本来意味がないはずの行動に価値が生まれる状況は意外と多く、それによって考えてもみなかった神の一手が閃くことが多くあるのだ。

物事を考えるとき、人間はセオリーから入るもの。このゲームでもまずは一石二鳥となる手を模索するのがセオリーだろう。そのときぱっと考えて有効になりそうにない手は頭から除外することになるはずだ。そういった思考の過程で自然と「盲点」が生まれる、というのが閃きを生むためのミソだと筆者は考える。

水の入った容器に小さい亀裂が開いたらそこから大量の水が吹き出すのと同じく、悩んで悩んで袋小路に陥った状態で盲点に気付くことで、その亀裂から大量のアイデアが湧き出る。それこそが強い閃き体験なのだと思う。

筆者が実際に体験した「神の一手」

せっかくなので筆者が実際に体験した「神の一手」の一例を紹介しよう。

 
ここに行きたいが、そのためには移動力が1歩足りない。

上図の状況で、なんとかして3体の怪物を倒したい。色々考えた結果、人型ロボが装備している「2マスを貫通できる高威力の槍」で下に並んでいる怪物を2体同時に貫けたら良さそうなことがわかった。しかし人型ロボの移動力ではそこに行くには1歩足りない。

仕方なくほかの可能性を色々考えてみたが、上手い方法を見つけられずにいた。いっそ倒すのを諦めてその場をしのぐ方針に切り替えるか。いやでも何とか倒せそうな気がする……。

飛行型怪物を左下に動かす手を思案中。
飛行型怪物を左下に動かす手を思案中。

悩むなかでふと、砲弾の爆風で飛行型怪物を移動させる手を考えてみた。これで敵をまとめればノックバックの激突ダメージ込みで倒しきれるかもしれない。怪物が出てくる穴もふさげるし一石二鳥だろう。味方ロボが爆風で移動してしまうが、まあ別にいいだろう…。

ここでハッとなった。

「別にいいだろう」どころじゃない! 爆風で移動させれば本来やりたかった槍二枚抜きが実現できるではないか!

爆風で1マス動いたことで本来行きたかった位置に届いた。
爆風で1マス動いたことで本来行きたかった位置に届いた。
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さらに敵がまとまったことでノックバックによる追加ダメージを与え……
槍で突き刺し一気に倒しきることができた。
槍で突き刺し一気に倒しきることができた。

戦車の砲による激突ダメージ込みでダメージ量ピッタリ、3体の怪物を見事このターンで倒しきることができた。

あらためて考えると簡単に思いつきそうな手ではあるが、それまではずっと砲弾で敵にダメージを与えることばかり考えていたので、筆者の脳内では完全に盲点となっていたのだ。少なくとも筆者の頭には数珠つなぎの電球がパパパっと光るような閃き体験ができ、すべての問題が一挙に解決した神の一手で間違いない。

『Into the Breach』で扱われる数字は非常に少なくすぐに覚えられるシンプルなルール、プレイヤーができる行動も序盤は1種類ずつしかないなど、最低限の要素でゲームが構成されているという特徴がある。また、敵が行ってくる次の手が明確に可視化さているという点もあり、ほとんどの情報が盤面に見えている状態になっている。これらもまた「神の一手」の閃きやすさに貢献していると筆者は考える。

なぜなら、複雑で把握しきれない状態では脳内での盤面再現ができないからだ。シンプルかつ視覚的にすべて伝わるようなゲーム設計になっていることで脳内で思考めぐらせることができる。それが閃きと神の一手に繋がるのだ。

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