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これがMicrosoftの底力! 「Flight Simulator」ファーストインプレッション - GAME Watch

 ついに「Flight Simulator」を体験することができた! 現在筆者はX019に参加するために英国ロンドンを訪れているが、その目的は「Flight Simulator」を体験するためといっても過言ではない(本当は「Age of Empires IV」もだが、残念ながら出展されなかった)。PCゲーム出身の記者としては、誰よりも速く、この歴史的なシリーズの最新作を体験したいと思ったのだ。

【Microsoft Flight Simulator - X019 - Gameplay Trailer】

 今のゲームファンに「“フライトシミュレーター”というゲームジャンルが一世を風靡した時代がある」といっても誰も信じてくれないだろう。「エースコンバット」シリーズ(バンダイナムコエンターテインメント)のような空戦を扱ったものを除けば、純粋にフライトを楽しむフライトシミュレーションを主題にしたゲームなど、今や跡形も残っていないからだ。

 しかし、1990年代後半、「シムシティ」(Maxis)の大ヒットによって開花したシミュレーションゲーム大ブームの時代に、PCのグラフィックス性能および処理性能の向上に後押しされる形で、次々にフライトシミュレータージャンルの傑作が生み出された。筆者が縁があったタイトルだけでも、「Flight Unlimited」(1995年~、Looking Glass)、「Sierra Pro Pilot」(1998年、Sierra)、そして「Microsoft Flight Simulator」(1982年~、Microsoft)。中でも「Microsoft Flight Simulator」はまさにフライトシミュレータージャンルを牽引する存在だった。

 シリーズとしては2006年にリリースされた「Flight Simulator X」が最後の作品で、実に14年振りの最新作となる。同シリーズの開発を手がけてきたAce Game Studiosは2009年に解散し、新生「Flight Simulator」は、フランスのAsobo Studioが担当している。Asobo StudioはXbox Game Studios傘下ではなく独立系のデベロッパーだが、「Kinect Rush」や「Disneyland Adventures」、「Zoo Tycoon」といったXbox独占タイトルをセカンドパーティー的な立ち位置で数多く手がけており、これまでの実績や技術力が認められて今回「Flight Simulator」の開発を担当することになったようだ。

【「Flight Simulator」コーナー】

常に人気だった「Flight Simulator」コーナー
操作の難しいゲームであるため、常にインストラクターがゲームの操作方法教えてくれた
ゲームのハイライトである着陸。緊張の瞬間だ
試遊で使用したHONEYCOMB製のフライトヨーク。ゲームの操作自体は、キーボード/マウス、Xbox Oneワイヤレスコントローラーでも可能となっている

 「Flight Simulator」シリーズを知らないゲームファンのために念のため説明しておくと、ゲームの舞台は地球全域だ。羽田空港からセスナで離陸して富士山遊覧飛行を楽しんだり、成田空港から旅客機で世界中の空港に向かったり、あらゆる非戦闘系のパイロットのフライトをシミュレーションするゲーム、それが「Flight Simulator」だ。リアルなシミュレーションを実現するために、必要スペックは常に高く、必要とされる空き容量も常に膨大となる。14年振りの新作と言うことで、仕掛けも超弩級だ。

【C172】

 マップデータにはMicrosoftの検索エンジンBingを全面採用し、MicrosoftのクラウドプラットフォームであるAzureサーバーを介してクラウドでマップデータをクライアント側に引っ張ってくるシステムになっている。ゲーム内で扱うデータサイズはトータルでペタバイト(約1,000TB)クラスになるということで、我々は「レッド・デッド・リデンプション2」のデータサイズが100GB(ギガバイト)を超えたことで大騒ぎしているぐらいだが、「Flight Simulator」は、ざっくり換算でその1万倍の1,048,576GBクラスのゲームということになる。もちろんデータサイズでゲームの面白さが決まるわけではないが、本作はとてつもないデータを扱うゲームであり、それがMicrosoftの最新テクノロジーによって駆動しているタイトルであることがおわかりいただけるかと思う。

【ナポリ上空を飛ぶ】

ボーイング747でナポリ上空を飛ぶ。遠景、近景に関わらず全体の描写が素晴らしい
こちらはエアバスA320。ナポリ東岸のベスビオ山やアルプス山脈が一望できる

 ちなみに、製品版での仕様はまだ固まっていないということだが、デモ機はCore i7、GeForce GTX 1080Tiといった常識的な範囲内のPCで4Kが快適に動作していた。インストールサイズについては、常識的な範囲内に収まる見込みで、環境に応じてローカルに置くデータサイズを変えられるようにしたいという。余談だが、今回グラフィックスオプションを最高設定の「ウルトラ」にすることはNGだった。最高設定にして、さらに描画範囲も最高にすると、現行のハイエンドでも重くなるのかもしれない。久しぶりにスペックのてっぺんが見えない超弩級タイトルといっていい。

 今回、「Flight Simulator」リードゲームデザイナーを務めるDamien Cuzacq氏にゲームを案内してもらったが、知れば知るほど凄いゲームだった。

「Flight Simulator」リードゲームデザイナーを務めるDamien Cuzacq氏

 今回用意されていたのは、空港間を飛ぶノーマルミッション、難易度の高い空港への着陸を目指すランディングチャレンジ、そして世界を代表する名所であるナポリ上空を飛ぶミッションの3種類。HONEYCOMB製のフライトヨーク、フットペダル、スロットルという極上の環境でプレイできたが、最初に感じたのは、「あの『Flight Simulator』がまさに現代に、現代のテクノロジーで甦った!」というものだ。

 グラフィックスは、4K/HDRに対応し、4,096x2,160のようなワイド/マルチモニターサイズにも対応。視点はワンボタンで機内/機外の切り替えが可能で、カメラ位置によって音響が変わる。ハットスイッチによって、眺め回すような感覚で自由に視点を変えられるが、空の表情、雲表現、地表の隅々まで精密に描かれた光景はまるで実写映像のようだ。とりわけ、前作と比較すると、HDR適用も然る事ながら、ライティングエフェクトの進化がケタ違いで、これにより太陽光の眩しさ、空気感、広がりなどをリアルに描き出している。地表に近づくと、建物が密集しているだけでなく、クルマも動いており、素晴らしいとしか言いようが無い。

 Cuzacq氏は、しばらく筆者が嘆声を挙げながらプレイするのを見守ったあと、ニヤリと笑って「時間や天気を変えてみるか?」と声を掛けてくれた。画面上部にマウスカーソルを合わせることで表示されるメニューから、時間/天候を変える項目を選択。24時間単位となっているスライドバーを左右に動かすと、リアルタイムで時間が変えられ、それと共にビジュアルが動的に変化していく。再起動や待ち時間は必要なく、固定カメラの超早送りのような感じで変わっていく。まさにシミュレータだ。

 Cuzacq氏はさらに地球儀のビューも見せてくれた。Google Earthのように日中のエリアが明るく、夜間のエリアは暗く表示され、世界を代表する空港の位置にマークが着いている。ちなみに日本は成田空港と羽田空港の2カ所だけで、「日本で2カ所だけしかないのはさすがに少ないのではないか」と抗議すると、Cuzacq氏は「大丈夫、ちゃんとある」と語り、すかさず地球儀をズームイン。すると地方の空港が大量に表示された。空港数はまだ確定していないが4万以上で、過去最多になるだろうということだ。

 筆者はそのまま羽田空港から飛ばしてみた。ランドマークについては現在鋭意作成中ということで、まだ東京タワーや東京スカイツリーのようなわかりやすいランドマークはまだなく、目に付いたのはまだ新宿の高層ビルぐらいだったが、飛ばしながらひとつ気づいたのは、生成されているビルや家屋がBingのリアルなデータに基づいているため、過去のシリーズにあった日本ではありえない文化圏の異なる家屋が建ち並ぶという不自然な風景はなくなっている。

 続いて天候の変化。こちらもユニークな機能が備わっている。晴れ、曇り、雨といった基本的な天候に加えて、ライブウェザーが用意されている。これを選択すると、現実世界の同地の天候が採用される仕組みで、現実世界の天候、天候変化をリアルにシミュレーションしながらフライトを楽しむこともできるというわけだ。

 ちなみにタイムスピードは現時点では変えられず、時間を早めるのではなく、時間を飛ばす処理になるという。開発側としては時間の進みを変えてしまうと、シミュレーションゲームとしてリアルなものではなくなってしまうため、あえて入れていないという。

 ゲームエンジンは内製で名称は特に定めていないが、あえて付ければAsobo Engineになるだろうと語ってくれた。ちなみに社名のAsoboは日本語の“遊ぼ”から取っており、開発チームメンバーの妻が日本人であるところから来ているということだが、日本とも親和性の高いゲームと言えそうだ。

 アシストレベルは、「Forza Motorsport」シリーズのように、何十項目も用意されており、個々に設定することもできるし、イージー、ミドル、リアルの3段階でざっくり変えることもできる。筆者はイージーのまま遊び続けたが、ランディングチャレンジではリーダーボードも用意されており、世界中のパイロットと難易度別にスコアを競うこともできるなど、シミュレーションゲームとして遊び応えは十分だ。

 ゲームの主役である飛行機については、X019に合わせて航空会社とパートナーシップが発表された。エアバスやボーイングといったお馴染みの旅客機メーカーや、Textron AviationやRobin Aircraftなどのセスナ/軽飛行機メーカーなど、8社が名を連ねており、今後さらに新たなパートナーシップを発表する予定があるという。

 リリース時期はPC版先行で2020年を予定。PC版リリース後は、Xbox版も予定されているがこちらの時期は未定。現在PC版で実施されているプレビュープログラムは順調で、まもなくメジャーアップデートを実施し、さらに製品に近づくとしている。

 今回の試遊で、ゲームメーカーとしてのMicrosoftのシンボル的な存在である「Flight Simulator」が、Microsoftの最新技術によって現代に甦りつつあることがわかり、一ファンとしてリリースが非常に楽しみになった。フライトシミュレーターファンはハイスペックなPCを準備してしっかり待ち構えたいところだ。

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